研究テーマ

本研究室が目指すもの

柔軟な環境認知・運動制御を体現する生物の情報処理機構には未だ解明されていない部分が多く,近年,脳科学,神経生理学,認知心理学,人工知能,ロボット工学など様々な分野で横断的にその機能解明が図られています.我々の研究グループでは,自律分散かつ可塑的な特性を有する生物システムがいかにして合理的な知を実現しているのか?という問題に対し,工学的立場から数理モデル化を行いその機能解明を試みるとともに,開発した適応・学習のモデルを適応型ヒューマン・インタフェースとして実応用することを目指しています.
具体的には,「未経験環境下における人間の環境認知,運動学習の解析」,「人工物が未経験環境下で合理的な行動を生成する技術の開発」,「インタラクションが長期的に継続するコミュニケーションインタフェースの開発」などに取り組んでいます.

研究事例

強化学習によるロボットの自律的行動知能獲得に関する研究

人間の運動学習において,他者の運動を観察し模倣することはダイナミックな運動技能を習得するための基礎戦略であり,模倣することによって得られた基礎方策は環境特性の変化や道具の使用など新たな環境や身体に適応する際に有益であると考えられます.私たちは,このようなプロセスが運動のみならず認知機能の学習基盤となっていると考え,運動課題や認知課題における人間によるデモンストレーションの観察から基礎方策を学習し,さらに強化学習によって自律的に環境変化に適応する枠組みなどを研究しています.


  1. Megumi Miyashita, Ryo Hirotani, Shiro Yano, and Toshiyuki Kondo, Direct Policy Search with Extremum Seeking, SICE Annual Conference 2017, Kanazawa University, Japan. (9/22, 2017)
  2. 宮下 恵, 廣谷 亮, 矢野史朗, 近藤敏之, ブラックボックス最適化としてのPI2アルゴリズム導出, システム・情報部門学術講演会2016, 滋賀県立体育館,滋賀, (12/6-8, 2016)
  3. 廣谷 亮, 宮下 恵, 矢野史朗, 近藤敏之, Extremum Seekingによる強化学習, システム・情報部門学術講演会2016, 滋賀県立体育館,滋賀, (12/6-8, 2016)
  4. 佐藤泰吾, 近藤敏之, ロボットアームによる倒立振り子の振上げ安定化学習, 日本ロボット学会第30回記念学術講演会, 札幌コンベンションセンター, 札幌, (09/17-20, 2012)

没入型VRによる幻肢痛・脳卒中運動麻痺リハビリ介入システムの開発

没入型VRを用いて仮想身体を思い通りに動かせるシステムを作成し、事故などで手を失った方の幻肢痛の治療や脳卒中患者さんの運動リハビリへの有効性について調べています。


  1. 近藤敏之, 長嶺 伸, 大村優慈, 矢野史朗, 没入型ヘッドマウントディスプレイの認知心理学実験への活用事例, 日本神経回路学会誌, Vol.23, No.3, (2016), Journal site.
  2. 長嶺 伸, 矢野史朗, 近藤敏之, 没入型VRシステムを介した運動観察が身体意識に及ぼす影響, ヒューマンインタフェースシンポジウム2016, 東京農工大学小金井キャンパス, (9/8, 2016)
  3. Shin Nagamine, Yoshikatsu Hayashi, Shiro Yano, Toshiyuki Kondo, An Immersive Virtual Reality System for Investigating Human Bodily Self-Consciousness, The 2016 Fifth ICT International Student Project Conference hosted by the Faculty of ICT, Mahidol University, Salaya Campus, Nakhon Pathom, Thailand (5/27, 2016)

脳波と機能的電気刺激による脳卒中リハビリテーションシステムの開発

脳波と機能的電気刺激を用いた脳卒中リハビリテーションシステムに関する研究を行なっています.脳卒中マヒ患者の脳波から運動意図を識別し,そのタイミングに合わせて対象の筋に電気刺激を付加し強制的に運動させることで脳の神経回路の再構築を促そうというものです.現在は,運動意図の識別に使用するERDという事象関連電位の発生メカニズムを調べており,ERD発現トレーニング法の考案やリアルタイム識別性能の向上に関する研究を進めています.

 下肢運動リハビリシステム



  1. Toshiyuki Kondo, Midori Saeki, Yoshikatsu Hayashi, Kosei Nakayashiki, and Yohei Takata, Effect of instructive visual stimuli on neurofeedback training for motor imagery-based brain-computer interface, Human Movement Science, 2014, doi:10.1016/j.humov.2014.08.014. Journal site Download
  2. Kosei Nakayashiki, Midori Saeki, Yohei Takata, Yoshikatsu Hayashi and Toshiyuki Kondo, Modulation of event-related desynchronization during kinematic and kinetic hand movements, Journal of NueroEngineering and Rehabilitation, 2014, 11:9, DOI: 10.1186/1743-0003-11-90. Journal site
  3. Yohei Takata, Midori Saeki, Jun Izawa, Kotaro Takeda, Yohei Otaka, Koji Ito, Toshiyuki Kondo, Analysis of Key Factors on ERD production for BCI Neuro-robotic rehabilitation, The Fourth IEEE RAS/EMBS International Conference on Biomedical Robotics and Biomechatronics, (BioRob2012), pp.240-245, Roma, Italy, 2012.

ヒトの運動学習に関する研究

手先に任意の力場を発生できるロボットマニピュレータ(マニピュランダム)やカーソルの運動に一定の回転変換を施したコンピュータマウスを未知の道具と仮定し,これを用いて人間の運動学習を調べています.
たとえば,1)二つの相反する視覚運動課題を交互あるいはランダムな順に経験することの効果,2)観察を行うことが後の学習に与える影響,3)運動単位(離散/連続)の違いが学習に及ぼす影響,4)ロボットによって受動的に到達運動を経験することが随意的な運動技能に及ぼす影響,などを調べています.これらの成果を効果的なリハビリテーション方策の提案につなげたいと考えています.

Motor Learning


  1. Takashi Sakamoto, and Toshiyuki Kondo, Visuomotor learning by passive motor experience, Frontiers in Human Neuroscience, 2015, doi: 10.3389/fnhum.2015.00279. Journal site
  2. 伊藤宏司, 近藤敏之 編著, 環境適応─内部表現と予測のメカニズム, シリーズ移動知 第3巻, オーム社, (2010)
  3. Toshiyuki Kondo, Kazuto Nakamura, Takayuki Nozawa: Motor Learning by Attentive Observation, The 4th International Symposium on Measurement, Analysis and Modeling of Human Functions (ISHF2010), Prague, 14-16, June 2010.
  4. 小林裕也, 近藤敏之, 野澤孝之, 相反する回転変換の同時学習における試行の連続性の効果, 第9回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会(SI2008), 岐阜, 長良川国際会議場(12/5, 2008)

NIRS脳計測に関する研究

脳機能計測に基づくブレインコンピュータインタフェースは運動機能障害により意思伝達が困難な人々のQOL向上として期待されています.私たちはfNIRS(近赤外光スペクトロスコピー)を用いて,人間の嗜好に基づく意思決定を脳活動から判別する研究などに取り組んでいます.

fNIRS Simadzu FOIRE-3000
fNIRS data


  1. Naoki Arizono, Yuji Ohmura, Shiro Yano, and Toshiyuki Kondo, Functional connectivity analysis of NIRS recordings under rubber hand illusion to find a biomarker of body ownership, Neural Plasticity, Volume 2016 (2016), Article ID 6726238. doi:10.1155/2016/6726238 Journal site
  2. 中鳥 直人, 野澤孝之, 近藤敏之, NIRSを用いた嗜好に基づく意思決定の推定, 第25回生体・生理工学シンポジウム, 岡山大学,岡山, (9/25, 2010)
  3. 野澤孝之,近藤敏之, NIRS脳計測データのオンライン分析のためのアーティファクト除去手法の比較, 第24回生体・生理工学シンポジウム講演資料集,pp.381-384, (9/26, 2009)

表面筋電図(EMG)を利用したヒューマンインタフェースに関する研究

生体信号からヒトの運動意図や心的状態を正確に読み取ることができれば,義手や車椅子などの制御や状況に応じた情報支援サービスを実現できる可能性があります.本研究室では,EMGから下肢の背屈・底屈・内転・外転動作を組み合わせた6種類のジェスチャを89%の精度で推定することを実現しています.また推定した下肢のジェスチャを制御入力として使用することで上肢への作業負荷を回避しつつ直感的な操作が可能な車椅子操作インタフェースを提案しています.
さらに両下肢の前頸骨筋の活動に基づいて電動車椅子を制御することにより下肢運動機能の廃用を予防する筋電駆動型車椅子を提案しています.EMGと車輪速度のマッピングを工夫することで,疲労耐性に優れかつトレーニング効果の高い操作方法を考案しています.今後は,医学的見地からの性能評価を行なうことにより,日常生活と運動機能回復訓練を両立させるリハビリテーションの実現を目指します.

Foot Gestures



  1. Akira Ishii, Toshiyuki Kondo, and Shiro Yano, Improvement of EMG Pattern Recognition by Eliminating Posture-dependent Components, Proc. of the 14th International Conference on Intelligent Autonomous Systems (IAS-14), Shanghai, China (7/5, 2016)
  2. Yuma Sasaki, Toshiyuki Kondo, A Proposal of EMG-based Teleoperation Interface for Distance Mobility, The 2011 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (IEEE SMC 2011), Anchorage, Alaska (10/13, 2011)
  3. Chiharu Arakawa, Toshiyuki Kondo, A Study on Foot Gesture Recognition for Portable Device Operation, The 26th Symposium on Biological and Physiological Engineering (BPES 2011), 立命館大学BKC, 滋賀, (9/22, 2011)
  4. 大石哲士, 林叔克, 近藤敏之, 下肢筋駆動型車椅子の操作方法の検討, 第23回自律分散システム・シンポジウム, 北海道大学, 札幌, (01/29-30, 2011)
  5. Toshiyuki Kondo, Osamu Amagi, Takayuki Nozawa: Proposal of Anticipatory Pattern Recognition for EMG Prosthetic Hand Control, Proc. of the 2008 IEEE International Conference on Systems, Man, and Cybernetics (SMC 2008), Singapore, 12-15, October 2008.

身体情報のリアルタイムフィードバックを利用した運動技能獲得支援システムに関する研究

スポーツに限らず何事も熟達者の真似をすることは上達の近道と言えますが,身体の動きは目で見て分かっても,力の入り具合などはなかなかイメージできません.これに対し私たちは,モーションキャプチャと表面筋電図の同期計測により熟達者の運動技能の分析を行なっています.この分析結果に基づいて熟達者に特徴的に見られる身体運動情報(手先速度や筋活動)を運動初心者が理解しやすいように可視化するとともに,訓練者の運動情報と重ねてリアルタイムに提示することで訓練を支援するシステムを開発しています.

Training System for Darts Throwing


  1. Tran Nguyen Bao, Shiro Yano, Toshiyuki Kondo, and Truong Quang Dang Khoa, Analyzing Effects of Variance in Kinematic Parameters on Performance and EMG in Dart Throwing, 2016 IEEE Sixth International Conference on Communications and Electronics (ICCE 2016), Novotel, Ha Long, Vietnam (7/28, 2016)
  2. Hiroshi Yamaguchi, Toshiyuki Kondo, Analysis of Motor Skill for Throwing Darts: Measurement of Release Timing, SICE Annual Conference 2011, Waseda University, Tokyo, (9/16, 2011)
  3. Seimei Abe, Takayuki Nozawa, Toshiyuki Kondo: A Proposal of EMG-based Training Support System for Basketball Dribbling, Proc. of HCI International 2009, San Diego, USA, 19-24, July 2009.

ロボットの歩行動作設計によるオノマトペ・情動表現の共通理解に関する研究

私たちは他者のふるまいの観察からその意図や情動を読み取ることができますが,その感じ方は万人にとって同じであると言えるでしょうか?この問題はペットロボットの情動表出をデザインする上で重要な問題です.本研究室では歩行速度や関節の粘弾性・駆動力の大きさ等をパラメータとして変更可能な四脚歩行ロボットシミュレータを作成し,被験者に対して「ビクビク」や「ピョンピョン」などのオノマトペ(擬態語,擬音語)を表現する歩行パターンを設計してもらうとともに,他者が設計した歩行パターンからオノマトペを正しく推定できるかについて実験を行っています.実験の結果,身体的動作に関連するオノマトペは被験者によらず共通した歩行パターンとなるのに対し,心理的状態を表すオノマトペは被験者ごとに解釈が異なることなどが示唆されています.

歩行ロボットシミュレータ
二次元円環モデル(PA軸)上のオノマトペ分布


  1. 近藤敏之, 歩行ロボットの身体動作設計に見るオノマトペ・情動表現の共通理解, 篠原和子・宇野良子(編), オノマトペ研究の射程:近づく音と意味, ひつじ書房, (2013)
  2. 杉山雄紀, 林 叔克, 近藤敏之, 歩行ロボットの身体動作設計に見るオノマトペ・情動表現の共通理解, 第23回自律分散システム・シンポジウム, 北海道大学, 札幌, (01/29-30, 2011)

人間と人工物の相互適応系におけるインタラクションの持続に関する研究

ペットロボットのように人間が人工物に不可避的に適応する性質を利用した応用だけでなく,その適応過程を支援するメカニズムや人工物の側からも自律的に人間に対して働きかけることの重要性が認識されつつあります.本研究では,人間との関係を維持し続けるために人工物が有するべき機能条件を明らかにすることを目的として,AIBOを用いたヒューマンロボットインタラクション実験を行っています.

HAI実験
fNIRSによるHAI中の脳機能画像の計測


  1. Takayuki Nozawa, Toshiyuki Kondo, Autonomous Adaptive Agent with Intrinsic Motivation for Sustainable HAI, Journal of Intelligent Learning Systems and Applications, 2, pp.167-178, 2010. Open Access
  2. 近藤敏之, 平川大介, 野澤孝之, 内発的動機づけを持続させるHAIシステム, 人工知能学会第22回全国大会(JSAI2008), 旭川, (6/11, 2008)

個人画像ライブラリの活用を促進するインテリジェントフォトブラウザの開発

ディジタルカメラの普及と記録メディアの急速な低価格化に伴い,誰でも手軽に大量のディジタル写真を撮ることが可能になりつつありますが,保有する画像数が増加するにつれて,特定の写真を後から探し出して閲覧することは困難になります.また大抵の場合,我々は「写真を撮った」という行為自体に満足し,膨大な画像がパソコンのハードディスクに死蔵されています.このような個人画像の活用を促進することを目的として,(1)画像群を「撮影間隔」に基づいて階層的にクラスタリングして閲覧性を高めることや(2)過去の写真へのハイパーリンクを兼ねたサムネイルをスライドショーのように数秒ごとに切り替えて表示する「ダイナミックサムネイル」を提案し,その有効性をユーザビリティ試験を行って評価しています.
デモのページ:http://www.livingsyslab.org/APC/

APC


  1. Yuki Orii, Takayuki Nozawa, Toshiyuki Kondo, Web-based Intelligent Photograph Management System Enhancing Browsing Experience, Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics, Vol.14, No.4, pp.390-395, 2010.
  2. Yuki Orii, Takayuki Nozawa, Toshiyuki Kondo: User study of Automatic Photo Classifier by Color and Timestamp, Proc. of IEEE/WIC/ACM International Workshop on Web Intelligence (IWI’09), Milan, Italy, 15, September 2009.
  3. Yuki Orii, Takayuki Nozawa, Toshiyuki Kondo: Web-based Intelligent Photo Browser for Flood of Personal Digital Photographs, Proc. of International Workshop on Web Intelligence (IWI’08), Sydney, 9-12, December 2008.






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