分科会に向けた事前学習について
事前学習の目的
5件のチュートリアル講演終了後,参加者の希望に基づいて定められた5つのグ ループに分かれて分科セミナーを行います.この分科セミナーでは,講師を囲 んでセミナー形式で意見交換することで,各講演の理解をさらに深めることを 目的としています.そのため参加者には,講師があらかじめ指定した参考文献 ひとつをシンポジウム前に予習して頂き,講師への質問を考えて来て頂きたい と思います.各グループの事前学習資料
事前学習資料は下記からダウンロードして下さい.PDFを開くためには別途メールでお知らせするパスワードを入力してください.
「形づくりの遺伝子ネットワーク進化への計算機実験によるアプローチ」
藤本 仰一 君(大阪大学)
藤本 仰一 君(大阪大学)
生体内の遺伝子群はネットワークを成して発生過程を調節します。生物種に応じて、同じ現象でもいい加減な調節も精巧な調節もあります。遺伝子変異の蓄積は、ネットワークひいては調節能力を変化させたようです。ネットワーク構造と調節能の対応関係は如何に抽出できるでしょうか?いい加減な調節から精巧な調節へ進化出来るでしょうか?分子生物学の発展を参照しつつ、計算機実験が現実の進化に於けるこれらの問題を解けるか共に考えましょう。
事前学習資料
「人工化学 ー 集合し,自己組織化する生物分子のシミュレーション」
鈴木 秀明 君 (情報通信研究機構)
鈴木 秀明 君 (情報通信研究機構)
今日の生命科学では、今や時宜を得て高速計算が可能となったコンピュータを用いて細胞まるごとをシリコンの中でシミュレーションしようというシステムズバイオロジー(SB)のような野心的な研究が行なわれている。しかしながら現在のSBは生物データとの突き合わせのため、モデルをできるだけ精密にする方向に向いており、人工ニューラルネットワーク(ANN)のような簡単化された工学にも役立つモデルを提案するには至っていない。本講演の主題である人工化学はこの点でSBを補完し、生物分子のエミュレーションを通して計算や通信のための新しい工学的モデルを設計しようという研究である。講演では人工化学の基本的な考え方について述べた後、研究の経緯と最近の動向について紹介する。
事前学習資料
「時系列情報から読み解く数理モデル ー生体分子の階層的な構造揺らぎを例にー 」
小松崎 民樹 君 (北海道大学)
小松崎 民樹 君 (北海道大学)
生命システムを理解するためのアプローチには、大別して、背後に存在する数理構造を提唱するトップダウン的構成論的手法と微視的な立場からマクロな現象の再現を試みるボトムアップ的還元論的手法が存在します。前者は研究者のイメージが先行し大胆な仮定や粗視化のために自然から乖離したモデルに陥る可能性が存在する一方で、後者は個々の微視的事象を枚挙するだけでシステム全体を捉えることは困難です。熱揺らぎのなかで頑健に機能を発現する仕組みや未知の環境においても適応できる創発性を内在する生命システムの全体像を解き明かすためには、“トップダウン”と“ボトムアップ”の両アプローチを橋渡しする新しい角度から見つめ直す必要があるのではないでしょうか?現象に照らし合わせつつ、できるだけ自然な形で生命システムの論理を探るために、我々が最近行っている研究の一端を紹介したいと思います。
事前学習資料
「オートポイエーシスと人間再生」
河本 英夫 君 (東洋大学)
河本 英夫 君 (東洋大学)
オートポイエーシスの機構じたいは、とても不備なかたちで定式化されている。この構想を生かすためには、つねに機構の改良形を定式化し続ける必要があるが、どのように改良するのかについての手順を示す。今回は、脳神経系障害者のリハビリでの再生技法の開発にどのようにオートポイエーシスが関与するのかを取り上げる。神経は再生しない。そのため神経系の機能回復ならびに運動能力の回復には独特の再生システムがある。これはロボットの動作に何が必要かを対比的に示すことにつながる。
<参考文献>
河本英夫『オートポイエーシス――第三世代システム』(青土社)ことに第三、四章。
河本英夫『システム現象学』(新曜社)ことに第三章、四章、六章。
事前学習資料
<参考文献>
河本英夫『オートポイエーシス――第三世代システム』(青土社)ことに第三、四章。
河本英夫『システム現象学』(新曜社)ことに第三章、四章、六章。
「社会シミュレーションの考え方」
高橋 真吾 君 (早稲田大学)
高橋 真吾 君 (早稲田大学)
社会シミュレーションでは,生来的に複雑な相互作用をする社会エージェントをモデル化し,社会システムを理解し,そこから問題の解決を目指すアプローチである。社会シミュレーションは,EpsteinのシュガースペースのようなセルモデルやAxelrodの規範生成モデルのようにシンプルな行動規則からの創発特性を見るモデルだけでなく,近年は本質的に不確実性を除去できないビジネス複雑性と呼ばれる状況下での意思決定に役立てる方向が議論されている。今回は社会シミュレーションの初心者を念頭において,基本的な考え方の特徴を中心に話をする予定である。
事前学習資料